(8)西川まゆ×黒木陽子
                                                                                           
「そうだ、先輩に会おう!」第2弾、ということで、私黒木陽子は衛星初期メンバーの西川まゆさんにインタビューをいたしました。 西川まゆさんは旗揚げ時期に衛星に入団、宣伝美術や衣装、小道具、制作を担当し、会社設立にも、フリンジシアタープロジェクトの前前身団体である「京都ライトシアタープロジェクト」の発足にも大きく関わってらっしゃいます。2001年頃退団後、映像の衣装のお仕事をされていて、現在は一児のお母さんに。私にとってはマジ先輩です。さあ、どんな話をきけるのでしょうか!!前回、宮嶋先輩からの「インタビューの時はメモをとるといいよ」との教えは果たして活かされるのか・・・?!





西川まゆさん


衛星に入ったきっかけ・そのときの雰囲気


黒木:衛星に入ったきっかけを教えてください。旗揚げから、いらしたんでしたっけ・・・?

西川:もともと雪だるまプロ(※京都大学の映画サークル)にいてた時に蓮行さんと知り合って、「衛星旗揚げして、(京都大学)A号館でミーティングやっているから来て」っていう感じやってん。そのころは、たしかまだ「カフェ」(という呼び方)じゃなかったんよね。

黒木:え?!そうなんですか?

西川:なんか途中から(ミーティングのことを)「カフェ」って(蓮行さんが)言いだしてん。場所も、初めはブンピカ(※京都大学文学部控室)じゃなくてA号館でやってたよ。

黒木:へー。衛星でまゆさんが関わられた最初の公演は、『ウォルターミテイにさよなら』ですよね?

西川:えーそうやったかな・・、あんまりその頃の記憶が曖昧なんよね・・。
(※後の雑談で、如意プロデュースの自主企画公演『福音の廻廊』初演だったと判明する)

黒木:当時の、旗揚げの時の空気とか覚えています?

西川:そんな「やったるでえ!」みたいなのは無かった。知り合いが集まったって感じ。

黒木:あの・・私は不思議なんですけど・・。当時蓮行さんて、めっちゃ人を選ぶというか・・尖ってるというか、そういう感じやったじゃないですか。よく旗揚げに人が集まったなあと思うんですけど・・。

西川:みんな「なんかおもしろそう」って思ったんちゃうかな。「新しいことをやりそう」っていう感じがあったんちゃう?あと、今でもそうかもしれへんけど、蓮行さんてゴリゴリの演劇人って感じちゃうやん。だから「私たち演劇やってます!」っていう感じがなかったから、敷居が低くていろんな人が来やすかったっていうのもあるんちゃうかな。

黒木:そうですね・・。今でも演劇人とはあまり・・、仲がよくないわけじゃないんですけど・・。

西川:「表面上のおつきあい」みたいな感じやろ。

黒木:いやいやいや!!あははははは!でもまあ、演劇じゃない人の方が、仕事でも仲良くさせてもらっている気はしますね。



思い出写真館
持って来ていただいた懐かしのスナップ写真を眺めながら・・




黒木:うわー!うわー!

西川:これ、何やっけ。

黒木:これは佐々木企画さんと合同公演です。常楽寺さんでやったんですよね。私、この赤いTシャツよく着てたな・・。









西川:これはあれやな。OMS(※扇町ミュージアムスクエア)やな、今はなき・・。OMSの裏の方。

黒木:わー。懐かしいー・・。『千年王国の避難訓練』(初演)ですね。私、背中すごい見えてる・・。




黒木:これは打ち上げですかね・・。カラオケ行ったりしてたんですね。

西川:また赤いTシャツ着てるやん。

黒木:これ、勝負Tシャツやったんですよね。

西川:もっと勝負した方がよかったんちゃう。

黒木:ははははは。


衛星での仕事


黒木:(まゆさんは、)初めからスタッフとして関わってらっしゃったんですよね?

西川:そうやね。衣装と小道具とか宣伝美術・・。サイトつくったり、DMのデータ管理と、発送も・・。(黒注※当時、『今月の如意』という情報チラシを作成して、いくつかの団体を募って相乗りでDM発送していた。その後、京都ライトシアタープロジェクトを立ち上げた際の『KLTnews』の発行につながった。)

黒木:あー、あれですよ。相乗りDMは・・あの、白い封筒のやつ。

西川:郵便書簡な。(黒注※ミニレター。25g以下なら他に封入物を入れて62円で発送できる。当時は・・いくらだったっけ)

黒木:私、めっちゃ覚えてます。団体数が多くて重量オーバーになってしまって。印刷物の端を裁断機で切って、入れ直して・・。京都大学のA号館(当時は夜間もフリーで入れた)で夜明けまで作業しましたよね。

西川:郵便書簡、今でも家掃除してたら出て来るんよね~。

黒木:思い出に残った公演は?

西川:最初の頃の方がよく覚えてるな・・、『サロメ』初演とか。京都大学のE号館の中庭でやってて・・。日も長かったから・・20時開演にしよかーって。あと、E号館の2階を「2階席にしよっか」みたいな。

黒木:大学に許可とらずに勝手にやってるんですよね。ところで2階席までお客さん入ったんですか?

西川:入ったよ。満席やから2階、じゃなくて、「2階席あるらしいから行こか」みたいなお客さんが入った。

黒木:まゆさんは、いつから宣伝美術を担当されてたんですか?

西川:その頃、この界隈の劇団のチラシを一手に引き受けて、カッコ良く作ってくれる人がいて、いろんな劇団がそこに頼んでたんよ。それがブームやったんよね。

黒木:へー!それ、初めて聞きました。

西川:入稿・印刷まで請け負ってくれる。夏目組とかも頼んでたんちゃうかな?それで、『(総理)保科仙吉』(初演)の時に、衛星もその人に作ってもらおうとしたんやけど・・。どうやらその人は、作品のあらすじを聞いたらイメージを勝手につくるスタイルでやってたらしくて・・、蓮行さんとあわなかった。で、私、その時Mac使えたから、担当する事になったんよね。

黒木:当時はパソコン持ってる人も少なかったですもんね・・。

西川:・・とにかくチラシばっかり作ってたわ。輪転機ばかりまわしてた。赤べこ(黒注※『赤べこカマトト早急便』初演)の時やったかな?5万枚とか輪転機でまわしたから・・ゲーはきそうになったわ。

黒木:私も入ってから、吉田寮の輪転機(黒注※京都大学吉田寮の自治会が運営する印刷室。マスター1枚70円、100枚ごとに40円で激安でした。今はどうなんでしょう・・)ばっかりまわしてましたね。ああ!そうだ。まゆさんに教えてもらった、あの紙を揃えて「ブー」って息を吹きかける技、誰もやってくれないんですよ。

西川:紙がぴしゃっとくっついたままやと輪転機の吸い込みが悪くて詰まるから、息をふきかけて一枚一枚をふわっとさせる。

黒木:それです!

西川:・・ありとあらゆる輪転機のメンテナンス法をマスターしたな。ここのこのマークが出たらここ空けてこう、とか、印刷汚れがでてきたら、ここをふく、とか。毎月公演してたし。

黒木:あと、まゆさんのお仕事で私すごい!と思って覚えてるのは、万博のスタンプラリーです。(黒注※大阪万博ホールで行われた学生演劇祭に『宇宙巡査部長ガリバン』で参加した際、終演後、エキスポランドで出演者スタンプラリーイベントを行った。ちゃんとエキスポランドの許可を取って催し物会場も借りた!)あれは、そのまま飛び込みでエキスポランドさんと交渉したんですか?

西川:うん。飛び込みで行って・・。万博公園内のホールでやってた(公演の)企画やったし、けんもほろろという感じじゃなかったよ。役者が、遊園地内でふらふらしてて、お客さんがそれを見つけたらスタンプおしてもらって・・スタンプラリーしたんよね。で、ステージで最後に揃った人にプレゼントあげて。エキスポランドも少しでもお客さんが入るんやったら・・って感じやったんちゃう?

黒木:駒田さん(黒注※駒田大輔さん)も当時客演やったのに衣装のまま観覧者に乗ったりしてくれたんですよね。


衛星退団後・・・いろいろ


黒木:今ではもう吉田寮で印刷することも無くなっています。印刷屋さんに頼んだり、公共施設の輪転機使ったり・・。

西川:今は印刷も安いもんな。

黒木:事務所も・・蓮行さんちにあった事務所から引っ越したときはいらっしゃいましたっけ?

西川:その時はもうおらへんな。その時に、うちのお父さんの事務所からコピー機を譲ったんは聞いたけど。(黒注※西川まゆさんのご実家は士業をしてはりまして、会社の設立や事務所立ち上げるときにお世話になりました。)

黒木:衛星をやめられた後は衣装(の仕事)をやってはるんですよね。『鴨川ホルモー』のエンドクレジットで西川まゆって名前出てて、「おおっ!」ってなりました。

西川:松竹衣裳っていう会社に、主にお世話になっています。『鴨川ホルモー』や『武士の家計簿』とかの衣装の他に、土曜ワイド劇場みたいなんとか。

黒木:映像の世界って、衣装ってどんな感じなんですか?

西川:レンタルもあるし、ほとんど買い取りかな。買い取ったものが大きな倉庫にストックがあって、そこからコーディネートしなおしたり・・。「そんなん着られへん!」みたいなんもいっぱいあるけどな。映画やったら一本で三ヶ月くらい、二時間ドラマでも一ヶ月弱くらいかかるかな。指名されることもあるし、空いている人に割り振ったり・・という感じよ。

黒木:大変そうですよね・・。

西川:衣装合わせに行ったら、自分の用意しているラインとは全然違うことを言われたり。あと、役者さんが自分の中でイメージを作りこんでしまって、監督が前もって私と打ち合わせたラインとはまったく違うのに、「ですよねー」って女優さんに答えたりして。「おいー」とか。洋服って言ってたやん!和服用意してないんですけど!みたいな。

黒木:それは理不尽だ・・。

西川:チャックさんとか、今なにしてんの?

黒木:ああ!チャックさんにもインタビューしてるんですよ!チャックさんはね・・

西川:〇〇やね

黒木:あはははは相変わらずですね。△△△△さんとかどうしてるんでしょうね

西川:〇〇なんちゃう

黒木:はははははは相変わらず毒舌ですね。


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ここには載せられない毒舌トークが続く・・
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衛星へのメッセージ

黒木:今、衛星時代のことを思い出して、どうお感じになりますか?

西川:いろんなことやってて面白かったなあという感じかな。森見登美彦の『有頂天家族』に出て来る主人公が・・狸やねんけど、「面白きことはよきことかな」っていうのがあるんやけど、そういう印象がある。

黒木:そうか・・。なんかいいですね。嬉しいです。そうだ、ロッピーもがんばってPRしましたよね。

西川:京都中のローソン回ってチラシ置いてもらったよなあ・・。(黒注※コンビニに情報端末が設置され始めたころ、衛星はローソンチケットでの販売を始め、いち早くロッピーでのチケット購入をお客さんにすすめたのです。ローソンさんとお話ししまして、京都市内のローソン直営店にチラシを置かせてもらいました)

黒木:あと、バスの広告も。(黒注※何団体か劇団をあつめてお金を出し合い、市バスに社内広告を出しました。これは京都ライトシアタープロジェクトの企画として。)

西川:やったなぁ・・。

黒木:いろいろやりましたね・・。(建ったばかりの京都大学文学部新館の教室に劇団集めて説明会したことを思い出す黒木)・・ああ!全然メモれていない。

西川:大丈夫なん?

黒木:おしゃべりに夢中になってしまって・・また、テープ起こしから始めます。

西川:(あいかわらずやなぁ・・)

黒木:最後に衛星に対して応援メッセージを。

西川:どんどん新作やってほしいなーという気はする。最近の活動みてると「効率よく仕事してんなーって」気はする。まあ観に行ってない私が言うのもあれやけど。

黒木:あははははは。

西川:最初の頃に関わっていた私としては、毎月とは言わへんけど年にいくつか新作やってもいいんちゃう?って思います。

黒木:がんばります!ありがとうございました。



この後、お嬢さんと一緒に衛星の稽古場を見に来てくださいました。でれでれになる蓮行、の絵。
「蓮行さんがあんなに赤ちゃんにメロメロになるとは・・」と後日メッセージをいただきました。そうですね・・ほんまに。


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懐かしい写真に気もそぞろ。昔話を繰り広げて、完全に後輩モードになってしまいました。

お話してすぐに「ああ!まゆさんや~」と思ったのは、まゆさんの変わらぬの毒舌の切れぶり・言葉のチョイスのいかしたセンス(当時はご自身のことを『罵倒家』と表現してはりました)です。衛星に入ったばかりの私は「かっこいい・・。」と、憧れておりました・・。(私の筆と内容のせいで全然伝わらないのが悔しい!)
西川まゆさん、ありがとうございました!