(4)チャック・O・ディーン×紙本明子
                                                                                           

このインタビューのコーナーを考えた時に、一番に頭に浮かんだ人が「チャック・O・ディーン」さんでした。劇団衛星に欠かせない元メンバー。彼がいなかったら、私も劇団続けてなかったかもしれない。今では二児のパパのチャックさんに、当時の思い出をお聞きしました!


紙本:嬉しいです、チェックさんにインタビューお願いするの、絶対無理だと思っていたんです。

チャック:ええ、そうなん〜。

紙本:最初は、***(チャックさんの今の職場)に電話しようと思ったんです。

チャック:あはは。

紙本:ネットで調べて。さて、かけようと思った時に、「は!これは迷惑やわ…」と思ってやめて。携帯が変わってなければいいな…と思って、思い切ってメールしたんです。

チャック:いや、ちょうど今年の春、ちょっと時間があったから、ファックさんと食べ放題に行きたいなと思ってて。うちの近所のケンタッキーが食べ放題やっててさー。

紙本:あー、それ!連れて行ってあげて下さい!喜ぶ喜ぶ。

チャック:そうかー、まだファックさんは現役(よく食べる)なんや。

紙本:現役ですよ。こないだも飲み会してた時に「あれば食べるので、もう出さないで下さい。」って言ってました。よく食べます。


(この後、しばらく焼き肉を食べている時間が続きます。)




何からお話したらいいか分からないのですが適当に話しましょう。


チャック:普段は、KAIKAにみんないるの?

紙本:あ、チャックさんはKAIKAに来られたことないですか?!

チャック:ないよー。稽古場なん?

紙本:KAIKAは、四条烏丸から徒歩8分にある、アートコミュニティスペースなんです。そこに劇団の事務所もあります。1Fがファミリーマートで、2Fが稽古場やら劇場やらに使ってるとこで、3Fがコワーキングスペースになってるんです。

チャック:衛星が運営してるの?

紙本:運営はNPO(フリンジシアタープロジェクト)がやってて。衛星はKAIKAのフランチャイズカンパニーなんです。

チャック:へー。もともと稽古場(用の施設)じゃなかったんでしょ?

紙本:3FはもともとIT企業さんの事務所で、お洒落でキレイだったんですけど、2Fは倉庫になってて。みんなで掃除したり、床を剥がしたり、天井抜いたりして、なんとか今のようなスペースになったんです。

チャック:へ〜。相変わらず大変だね。

紙本:大変でしたね〜。

チャック:じゃあ、KAIKAに行けば誰かがいるの?

紙本:いますよ。植村さんとか結構いますよ。

チャック:すごいー。え…ファックさんも笑 事務仕事笑 してるの笑 ?

紙本:ファックさんはね…!

チャック:もしかして、事務仕事得意なの?!

紙本:事務作業は得意ではないですけど、営業とかにすごい才能を発揮してて。

チャック:え〜〜。あのファックさんが。

紙本:今や、ファックさんがいなかったら衛星は回らないですよ。稽古場も本番も。

チャック:いや〜、昔の姿からは考えられない。昔は何も出来なかったのに。衛星に入ったから伸びたんだね!

紙本:そうそう笑。チャックさんの、当時のファックさんの印象は?

チャック:かわいい。

紙本:今もかわいいってよく言われていますよ。

チャック:そうかー、ファックさんは『ピロティー(※かつてファックジャパンが所属していたバンド)』はまだやってるの?

紙本:随分前に解散しましたよ。

チャック:じゃあ今は、音楽活動はしてないんや。

紙本:いや、今はラップですよ。『京都俳優ラップの会』っていうのを、田中遊さんと立ち上げて、活動していますよ。

チャック:ええ!遊さんがラップしてるの?

紙本:遊さんが、やろう!って言って始まった会で、月に1回ジャンカラで活動してますよ。こないだも『gate』(※KAIKAでの試演会イベント)に出ましたし。

チャック:遊さんといえば、毎回本番の時に、ご家族がケンタッキーを差し入れてくれてたよね。

紙本:ああー!そうそう、「オヤジがかしわ持ってきたんで。」っていう名台詞がありました。

チャック:なつかしー。そっかー、ファックさんと変わらず仲いいんやね。


当時はチャックさんがすごいモテてました!


<在籍当時のチャック・O・ディーン>

チャック:そんなにモテてないよー。」

紙本:チャックさんの話を人にする時は、”チャック牧場”の話を必ずします。チャックさんの周りに女の子が寄ってくる…。

チャック:あはは、そんな話あったねー。

紙本:今は? 結婚すると変わりますか?

チャック:うん。なんか、もういいかなって。岡嶋さんもそうでしょう。

紙本:え?

チャック:岡嶋さんも当時は遊び倒してたでしょ。

紙本:いや!岡嶋さんは元々そんな遊ぶ人じゃなかったでしょ。

チャック:いや、岡嶋さんは遊んでたよきっと!

紙本:いやー、ないですよ!岡嶋さんに限っては!

チャック:絶対遊んでたよ〜、僕らが知らないだけで。

紙本:嘘や〜!ないですって。それは、チャックさんの世界がそう見えるんですよ。

チャック:僕の妄想なの?

紙本:そうですよ!普通に生きててモテてた人の世界の話ですよ。

チャック:そうかなー。でも、ファックさんもちょこちょこつまみ食いとかしてるでしょ。

紙本:…ええ!?ファックさん?!いや無いでしょ!だって未だに童貞ですよ。

チャック:マジで?そんなことないでしょ。

紙本:マジですよ。それをネタに1本芝居も作ってますよ。

チャック:えー。それって、じゃあ、誰かに捧げる感じなんだね。

紙本:そんなに大切にしてる感じではないと思いますけどね。(ひどい)

チャック:そうかー。黒木さんは元気?

紙本:元気ですよ!

チャック:黒木さんは 40代になったら私の時代です!って昔言ってたのを覚えてるよ。もうすぐ黒木さんの時代やね。

紙本:本人はきっと、そう言ったこと忘れてると思いますけど笑。

チャック:なんかすっごい美人になったりしてるんだろうなーって思って。黒木さんに再会したら、恋してしまうんじゃないかって、ずっと楽しみにしてるんだけど笑



劇団衛星との出会い


紙本:チャックさんは、何年に劇団衛星に入ったんですか?

チャック:僕?忘れたね。

紙本:あははは〜。

チャック:紙本さん覚えてる?

紙本:えっと、21歳やったと思います。何年やろう…。

チャック:黒木さんに出会ったんだよね。カナート(※左京区にあるスーパー)でやったっけ?

紙本:そうです。カナートのお惣菜屋さんです。(※そこで、紙本と黒木はバイト仲間でした。)チャックさんは、大学何回生の時に入ったんですか?

チャック:1回生。春に合同説明会っていうのがあって、そこで、蓮行さんに…今でいう、”壁どん”みたいなんされて、「女の子にモテまくるよ。」と。「この世界、芸名をつけないとやっていけない。」みたいなことを言われたよ。

紙本:説明会で?

チャック:そうそう。紙本さんは?

紙本:私は…説明会は、根本くん(※現在ベピー・ピー代表)に説明をしてもらって、その後稽古場に行ったら、蓮行さんと橋本さん(※橋本裕介さん。当時劇団衛星のプロデューサーでした。)が、なんかマイライン契約の営業の話をしていて…。

チャック:ああ、あったね。劇団で仕事受けた時ね。

紙本:で、稽古の休憩時間に、当時分厚いメガネをしていた蓮行さんが、目の前に来て、何故かメガネをスパッと外して、「プロになる気はありますか?」みたいな事を聞かれて。「いや、特に何も考えてないです。」みたいなことを言った記憶がありますが、何でメガネとったんかなって事ばかり考えてましたね。

チャック:あははは…。

紙本:その後2ヶ月くらい、口を聞いてもらえませんでしたね。

チャック:すごいなー。

紙本:じゃあ、チャックさんは説明会で、蓮行さんに壁どんされて。

チャック:うん、口説かれたね。

紙本:入ってくれと。

チャック:ううん、もう入ってることが前提みたいだったな。もう付き合ってるみたいな。これからどう付き合うか?みたいな相談が最初だったね。

紙本:ええ〜笑

チャック:でも、当時、僕は色んなサークルに入ってたから。

紙本:入ってたんや。

チャック:うん。大学生だから、テニスサークルでしょ。合コンサークルと、音楽ってかっこいいなって思って音楽系も入ってた。

紙本:何でそんなに入ってたんですか?大学生活楽しもう、みたいな?

チャック:そうかなー。うん、そうだね。

紙本:女の子にモテたい!とか?

チャック:それは、楽しみたい、の一部ですよ。当時はモテるために生きてたよ。っていうか、みんなそうじゃないの?あ、そうじゃないよね。

紙本:異性にモテるために生きることは考えた事がないかもしれません。でも蓮行さんとチャックさんはそこが通じていたんでしょうか。

チャック:男の子はみんなそうじゃないのかな。

紙本:どうだろう…。じゃあ、えっと、衛星には何年間くらい所属してたんですか?

チャック:えー、6年、7年くらい?

紙本:当時はどんどん人気が上がっていく感じでしたか?

チャック:そうだね。動員が伸びていく感じ?あ、でも入った当時から人気あったかな。最初に僕が出演したのが、『総理・保科仙吉』ってやつで、満員御礼で。吉田寮(旧食堂)の客席が山のようになってた、みたいな。

紙本:じゃあ、チャックさんがチケットを売ろうとかしなくてもお客さんがいたよ、みたいな。

チャック:いや、その時は、学校で蓮行さんにたまたま出会って、明後日ちょっと本番手伝ってくれない?って言われて、行ったら、出演することになってた、みたいな感じだった。

紙本:ええ!

チャック:テープカットするだけの役だったんやけどね。日替わりゲスト枠みたいな。

紙本:(その時は)劇団員じゃなかったんですか?

チャック:そうかな、劇団(の稽古など)に行ってはなかったからな。たまたま会って。変なちゃんちゃんこ着てる人がいる…と思って見たら、蓮行さんだった笑。

紙本:あー、(ちゃんちゃんこは)私の時代もぎりぎり着ていました。

チャック:ちゃんとした初舞台は、『サロメ』でエロド王役だったね。

紙本:ああ、初舞台で主演じゃないですか。こないだ再演しました。(※『超贋作サロメ冒涜版』。20周年記念公演①で上演した。)

チャック:すごくないよ。その頃は毎月1回公演するみたいな企画をやってた頃で。

紙本:会場はどこだったんですか?

チャック:外だったね。(※京大の中庭でした。)

紙本:外!


そうそう。あ。ユニット美人も10周年おめでとうございます。


紙本:ありがとうございます。

チャック:衛星20周年ってすごいよ。やっぱりね、植村さんの存在が大きいね。僕たちがいた頃から、一番、植村さんが輝いてた。

紙本:今も一番輝いてますよ。

チャック:植村さんを見てたら頑張ろうって思ったもんね。

紙本:当時から一番変わってなくて、一番変わったのが植村さんって感じですね。

チャック:僕が知らないメンバーの人も増えたよね。

紙本:高橋くんは知ってますよね?

チャック:インタビューの人でしょ?(※「頭をさげれば大丈夫」というインタビューサイトを運営している)

紙本:そうそう。首藤くんは?

チャック:知らない。

紙本:知らないですか。根本くんが代表をしている『ベビー・ピー』っていう劇団に所属してて、色々客演してもらってたんですけど、4年前くらいに衛星にも入団した人です。

チャック:根本くんもまだやってるの?

紙本:根本くんもベビー・ピーでやってますよ。



<『超贋作サロメ冒涜版』1999年再演時の様子>

紙本:一番衝撃的な思い出は?

チャック:そんな事言ったら、書けないよ。

紙本:ああ、じゃあ、書けるやつを。

チャック:えーっとね…。あ、蓮行さんもそういうことあるんだなーっと思ったことがあって。ある公演の時…、確か2日目の朝かな。劇場にちょっと早めに入ろうとして行ったら、今の奥さんだったと思うんだけど、劇場の近くで泊まってたんだと思うんだけど、蓮行さんが女性と2人で道を歩いてて。僕と会った時に、すっごい照れくさそうにしてたんですよ。

紙本:はいはい。

チャック:あ、蓮行さんもそういうとこあるんだなって思った。

紙本:なんやそれ!笑

チャック:あ、蓮行さんも照れたりすんだなーって笑。

紙本:嬉し恥ずかしだったんですかね笑。まだ蓮行さんもその時は20代ですもんね。じゃあ、これは書かせて頂きます。

チャック:あとは…。むちゃくちゃな事を言われたりはしなかったけど、なんで昼間から鉄の棒を切ってるんだろう?って思いながら切ってた時とかはあったな。

紙本:あはは!

チャック:今考えると効率も悪いし、しかもなんで切ってるのか分からないけど切ってたから笑。

紙本:すごいな。

チャック:あの時はお金がなかったし、お金がないことを何か他のプライスレスで補おうとしていたから。

紙本:お金がないことを知恵で賄うみたいな美学ですね。でも、当時のチャックさんは正にプライスレスな人でした。すごいなーって思ってました。

チャック:きっと効率悪かったよなー笑


あまりに演劇の仕事がハードで。


紙本:チャックさんが引きこもった時あったじゃないですか?演劇とか学校とか忙しすぎた時に。

チャック:あったあった。もうダメ!と思って、山で寝たりしてたよ。

紙本:山で?

チャック:うん、空見ながらぼーっとしたりしてたな。

紙本:チャックさんと連絡が取れなくなった時は、家に行ったりしてましたよ。

チャック:ええ、そうなの笑

紙本:何回も行きましたよー。いなかったけど。

チャック:いや、あの時の記憶が無いからね。

紙本:あははっ

チャック:完全に無いんだよね。

紙本:ああ、大学も忙しくって、劇団の仕事の他にも舞台監督でひっぱりだこやって、チャックさんが大変そうだ、みたいな事にはなってました。

チャック:ああ、あったね、京都芸術センターの仕事とかもあって、忙しかったな。

紙本:そうそう。

チャック:あ、何か覚えてるのが、家に帰って、何か食べようと思って冷蔵庫開けたら、ビールが2本しか入ってなくって、「あれ、僕普段ビール飲まないのに、なんでビールがあるんだろう。」って思って、冷蔵庫を閉めた記憶がある。

紙本:あああ、本当にそこまで追い込むチャックさんがすごい。

チャック:なんかねー。制御する事を知らなかったね。今も知らないかも。

紙本:えええ〜。じゃあ今は良い奥さんと一緒にいるから大丈夫なんですね?

チャック:そうそう。

紙本:ちゃんとブレーキになってくれるんですね。

チャック:そうだね。怒られるもん。残業するなって笑

紙本:素敵だ!


蓮行さんはどんな人でしたか?


チャック:一番、話をしてておもしろい人だったな。

紙本:へ〜。

チャック:一番影響を受けた人かなー。考えがまとまってなくって。

紙本:まとまってない? 考えをまとめる力が強い人だと思うんですけど。

チャック:小さくまとまってないって感じ?

紙本:なるほど。

チャック:今はどうなの?

紙本:私の中では、蓮行さんは当時から何も変わってないと思います。考え方だったり、女の子好きなとこも。

チャック:そうなんだ!当時僕は本気で、裸の女の子を蓮行さんに献上しようと思っていたよ。

紙本:ほんと、当時のチャックさんはまっすぐでしたね。昔、本当に信用できる人はチャックさんだ!って、蓮行さんが言ってたなー。きっとその辺りも含めてでしょうね笑。

チャック:僕も蓮行さん大好きでした笑。

紙本:今でも、稽古場に女の子がいたら効率があがるんだ!って言ってますよ。

チャック:変わらないね笑。

紙本:今はファックさんが稽古場に、なるべく女性に来てもらえるように試行錯誤しています。

チャック:裸の?

紙本:いや、薄着の。

チャック:あははは!



おわり


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当時も今も変わらない、本当に変な人でした。 紛れも無く、当時の劇団衛星を支えてくれたチャックさん。 チャックさんが今も劇団衛星にいたら、どうなっていたんだろう。と、ふっと考えて、切なくなったりドキドキしたりしながら、楽しい3時間(そんなに話していたのか!)を過ごさせていただきました。 チャックさん、昔も今も、素敵な時間をありがとう! これからも、劇団衛星をよろしくお願いいたします!