黒木陽子の「私はこんな海外ドラマを見てきた」
vol.44 愛じゃない!ときめきだった!

今回は、これ!



『愛の不時着』(韓国TvN 2019年12月〜2020年2月)
財閥の娘で優秀な実業家の女ユンセリが、兄二人を押しのけて財閥の後継者に指名!という絶好調なところでとある事故に遭いすったもんだあって38度線を超えて同じ民族なのに敵国(休戦中)である北朝鮮に入ってしまう。縁あって匿うことになってしまった中隊長のリジョンヒョクとその部下4人。素性は知らねどもユンセリと仲良くなっていく村の人たち。そして、みんなは知らないけど、中隊長リジョンヒョクは総政治局長の息子(ええとこの息子)で実は兄の死の真相を探っていたのだった!さあ、ユンセリはソウルに戻って覇権を取れるのか?リジョンヒョクは兄の無念を晴らせるのか?そして、二人の間に芽生えているこの気持ちはどうなるの!?朝鮮半島は統一できるの?どうして同じ言葉を話すのに敵なの?!どうなる!どうなる!(全16話/私は現在11話まで見てます)

いやー。面白いです。
とあるドキュメンタリーで、「K-POPは一つの歌の中にいろんなジャンル要素がミックスされている」というような解説がされていたのですが(うろ覚えです)、まさにこのドラマもそう!ふわふわドキドキした後に硬派な政治的駆け引きのシーンが入り、華麗なる韓国財閥のシーンの後に、アクションシーンが入り、そしてそのどれもが面白くてですね、「もう!どうなっちゃうの!」と釘付けになるのです。
北朝鮮の暮らしも韓国ハイソサエティの暮らし(庶民の暮らし)も丁寧に描かれ、メイクだったり着てるものだったり食べているものだったりの差が面白い。あえていうならダウントンアビーのよう。(ダウントンアビーは貴族と使用人のコントラストでそれが融け始める時代を描いているのですが)

ぜひ。
見ない?

いや、わかりますよ。『冬のソナタ』を通らなかった私のような人は、「『愛』・・・え・・・ちょっとなにそれ、私、恋愛ものは見ないことにしてるんで」って思うでしょう。そう、美男美女がいちゃついているのを見て、なにが楽しいんだと。好きなら好き、嫌いなら嫌いでいいじゃないか!と。二人で愛とか言って周りに迷惑をかけるんじゃない!世界の中心はあんたたちじゃないのだと。

大丈夫です。

『愛の不時着』の「愛」は、あれです。

『ときめきトゥナイト』です!!



『ときめきトゥナイト』(りぼん1982-1994年/作:池野恋)
吸血鬼の父、狼女の母を持つ魔界人の江藤蘭世。人間界の中学校に通うことになって、照れ屋で硬派な真壁くんに一目ぼれ。真壁くんの幼馴染の神谷さんとは常にバトルモード。だけど自分の正体は知られちゃダメだぞ!魔界から軽い王子のアロンもやってきて?!最初はそんな軽いノリだったのに、だんだん魔界の呪われた双子の王子問題やら、ふたりの前世やら、ルーマニアのギャングの家に行ったりやら、愛のために永遠の命を捨てたりやら、重くなっていくけど基本コメディです。

コメディなんで笑ったり、「どうして人間の男の子を好きになっちゃいけないの?」と魔界人蘭世が吸血鬼のお父さんに問いかけてちょっと切なくなったりしている中で、だんだん、真壁くんは実は人間ではなくて魔界の王子さまの双子の片割れで命を狙われていることが判明し、命を守ったり守られたり。

そんな感じです。
このことに気がついた時、神谷さんみたいな幼馴染的「昔から彼のこと知ってるの」という婚約者は出てくるし、婚約者のお母さんは神谷玉三郎みたいだ!韓国からやってきたアロンみたいなやつもいるし、何より、リジョンヒョクのこの感じ・・・照れて硬派で(軍人だから)・・・真壁くんだ!みたいにスルスルとときめきの登場人物たちのことが思い浮かびましたね。二人の運命は、愛はだんだん深刻になっていくけど、コミカルな部分やら、二人以外の思惑もちゃんと動いている感じ。シリアスなシーンの後に犬の神谷さんが助けてくれる感じ。
『ときめきトゥナイト』だな。うむ。蘭世と違って『愛の不時着』のユンセリは家族の中で孤立しているけれども・・・。

そして「いいドラマは食べ物が美味しそう(なことが多い)」というセオリーの通り、食べ物が美味しそう。特に北朝鮮・韓国共に庶民の食べ物が美味しそうで、逆にハイソ組の豪華なご飯はそれほど美味しくなさそうで、そういうところにも信頼がおけるな。

オススメです。

あ、逆に、『愛の不時着』が楽しめたのなら、『ときめきトゥナイト』もオススメですよ。