『あなたの知らない三国志の世界』
第十五回「ユニット美人の三国志とはいったい何だったのか6-3」


 2013年の5月〜11月にかけて半年かけてやったユニット美人の三国志vol.0〜4。

 この連載では、せっかく半年かけて作ったんだからそのままにしておくのはもったいない。という省エネ精神から、作品について語っていこうと思います。自分で自分の作品解説なんて、どうなんだい、それなら芝居にするなよ…というようなことを書いていきますので、そういうのが嫌な人は読まない方が良いがと思います。

****
 vol.3の『あの壁を壊すのはあなた』のことは書き終えた気がして、今日は最終話『守ってあげたい』についてを書く気持ちでパソコンを立ち上げたのですが、まだ書き終えてなかったし、1から読み返してみたけど、あまりにもむちゃくちゃな文章にびっくりしています黒木です。一生懸命書いた回よりも、移動中の車の中でiPhoneで思いつくまま書いたような回の方が読みやすかったりして。・・・なんだかなあ。
 くそー。こうなったら今日はてきとーに書いていきます!頑張りません!


その6:あの壁を壊すのはあなた3
○戦争がはじまる
 はい、そんなわけで(どんなわけだ)粥見は戦争への道をどんどんと進みます。

 ・アイドル提督周瑜のカリスマ性
 ・もうひとりの現代人魯粛の財力
 ・普通の人々リンちゃんたちの貧困

 これらの戦争の素地が整っていたところに、物語の主人公粥見の「度重なる失敗と時間の経過が引き起こした、元の世界に戻る気力の低下」がトリガーとなったのです。(ちなみに、粥見はvol.2まではあれほど言っていた「〜を救うため、命かけてみます!」という決め台詞を言わなくなっています。)

 そして、とうとう戦争大好き人間、孔明を召還してしまうのでした。

 孔明の正体はvol.4で明らかになりますが、自分の能力を最大限発揮したいという欲にまみれた人物として登場させました。アイドル周瑜の自己顕示欲やめちゃくちゃ強い呂布のような他者からの認めてもらいたい欲はなく、もちろん関羽のような「あなたが笑ってくれるなら尋常じゃない距離だって走ってやる」欲もありません。ただただ最適化された自分の能力をがしがし使っていくことに喜びを見いだすタイプ。そのためならば、理想も作ってしまいます。
 ただし、平和な成熟した社会ではあまりその欲は満たされません。
 常に最適なパフォーマンスを保ち続け、勝ち続けることなんて、多くの人には無理だからです。人は時に疲れるしサボるし、勝つ人がいれば負ける人もいます。仕事や家庭生活両方の面で常に自分の能力を最大限に発揮して、他者をいちいちコテンパンに負かし続けていたら、まともな社会生活は送れません。

 “「好適」で満足せず、「最適」を望む生物は滅びる運命にある”
 これは、山岸凉子『パエトーン』の中の一説ですが、何も生物学を取り上げなくても、みなさん普通に社会生活を営む上で自然にやっていることです。「勝ち過ぎはよくない」「和をもって尊しとなす」「仲良きことは美しきかな」ですね。

 それに耐えられないのが孔明です。だから戦争を起こすのです。
 他者を蔑ろにして能力を最大限に発揮できる場、その最たるものが孔明にとっては戦争だったのですね。

 「能力を最大限に発揮する」ことは普通は良いことですよね。でも、その文脈でけしかけられると「戦争なんかやめとこう」という和平を望む旧臣たちの声は、自分の能力を諦めて戦わずして敵に屈するなんて!と、ふがいなく響きます。

 で、『三国志』のとおりに、100万の軍勢の魏に粥見達呉(20万くらい)は戦争(ここでは赤壁の戦い)を仕掛けるのでした・・・。

 さて。前回ここでまとめると書いたのですが。結局まとまりませんで。ええ。
 次回、それでは戦争を止めるのはいったいなんだったのかということを書いて、ようやくvol.3のまとめにしたいと思います。