『あなたの知らない三国志の世界』
 第九回「ユニット美人の三国志とはいったい何だったのか4」

 2013年の5月〜11月にかけて半年かけてやったユニット美人の三国志vol.0〜4。

 この連載では、せっかく半年かけて作ったんだからそのままにしておくのはもったいない。という省エネ精神から、作品について語っていこうと思います。自分で自分の作品解説なんて、どうなんだい、それなら芝居にするなよ…というようなことを書いていきますので、そういうのが嫌な人は読まない方が良いがと思います。

 ようやく、vol.1について書きます。

その4:vol.1ピーチの園でつかまえて

○普通ならこうする・・・ことはすませておく

 vol.1のあらすじは、漫画『三国志』の主人公である劉備を、主人公の粥見が助ける話にしました。
 おそらく『三国志』好きな人なら一度はやってみたであろうシミュレーション。

 「どうすれば劉備・蜀は、天下統一できたのか?」

 三国志、魏・呉・蜀と三国あるから三国志なんですけれど、結局どの国も中国統一できないのですね。中でも蜀は一番田舎で人口も少なく、国力が一番低いのです。そんな弱い蜀のリーダーの劉備もまた、貧乏育ちでコネもない一介の農夫からなりあがっていく。そんな弱いチームが、数々の豪傑や天才軍師の活躍で、強豪チームに負けずとも劣らない戦をしていくのです。豊臣秀吉の一代記や、近いところでいうと日露戦争の勝利、なんかに重ねられるでしょうか、まあ、人気があるのです。
 しかし、先ほど言いましたように、蜀は結局中国統一できません。あと一歩・・・というところで、敵将を甘く見てしまって重要拠点を失ったり、部下が言うこときかずに重要拠点を失ったり、まあとにかく重要拠点を失ってしまうのです。

 そこで、「もしもここで■■が〇〇していたら(していなかったら)・・・」と三国志を読んだ人たちは、みんな考え出します。

 私ももちろん考えました。そして、おそらく現代からやってきた主人公もそう考えるだろうと。なので、vol.1では主人公の粥見は「三国志の主人公(正しくは三国志演義の主人公、です)劉備で中国統一する為に命かけてみます!」を合言葉に、蜀・劉備統一モデルをシミュレーションしていろいろ試していく話にしました。
 そして、あまり数多く武将を出すわけにもいかないので、劉備とその義兄弟の関羽と張飛に焦点をあて、「できれば、この仲良し三人組はみんな生き残った状態がいいな・・」という形で。特に、仲良し三人組の中で一番最初に死ぬ関羽を生き残らせたい。酒乱の張飛の死因は自業自得なのでまあいい。関羽が敵に敗れて死んだために、重要拠点は失うわ、弔い合戦なんてするもんだから国力は落ちるわ(負けるわ)、さんざんなのです。三国志初心者はみんな、このシミュレーションをするに違いないのです。

 そして、シミュレーションは所詮シミュレーションだということを、とっとと粥見にわかってもらわなければならなかったのです。
 シミュレーションは楽しい。だけれども、仕事でも人生でも、結果をあらかじめ知って采配をふるうことなんてできないし、傲慢なことだと思うのです。嫌でしょ、未来から来た人がわかっていることに基づいて自分の行動を操っていくなんて。・・・嫌じゃないかもしれないけれど、一緒に生きてくれない人に心を許すことはできない。
 ・・・それもあって、私は孔明があんまり好きではないんだろう。演義の孔明は超人すぎる。ちなみに、私は孔明の天下三分の計が諸悪の根源だと思っている。何が悪で善かはあれだけれど、100年も戦争を長引かせたのは孔明のせいだろう。さっさと魏に統一させればよかったのだ。なのに「天下のため、民のため・・」と表明しているところが腹が立つ。
 閑話休題。さてさて。粥見は仲良し三人組に自分も加わって仲良し四人組を形成、いろんなことを試行錯誤するのだけれど、粥見のせいで張飛はダメ人間が改善しないし、関羽は粥見の異質さに気がついて何回か殺そうとします。粥見がやる気を失い、シミュレーションをやめ、仲間に入るのをやめたところでvol.1は終わるのでした。

○三国志の情報の渦に飲み込まれてしまわないように
 さて。あまり数多く武将を出すわけにもいかない、と書きました。キャストの人数の都合もありますが、どちらかというとそれはあまり問題ではなく、「三国志初心者が、三国志嫌いだった過去の自分が、観た時に置いてきぼりな気持ちにならない」ことが大切だったのです。
 (はっきり言って、上の文章も読んでもらえているか不安です。)
 vol.1では、そのあたりのバランス、省略したり言葉を言い換えたりする作業も大変でした。
 劉備チーム、リーダー、孫権ファミリー、となるべく漢字を使わないようにしたり、ばっさり孔明を登場させなかったり。
 劉備「超雲、超雲がいない!5年前くらいに私らの仲間になって、めちゃくちゃ強くて忠義者、心強い味方の超雲がいない!」
 この一言で、三国志の人気武将超雲を説明したり。
 「『三国志』の主人公、劉備を皇帝に!」というセリフが何度も出てきますが、三国志の主人公は劉備ではないのです。三国志には歴史書の『三国志』と、面白おかしく書いた小説『三国志演義』とあって、私たちが参考にしたのは三国志演義をもとに書かれた横山光輝先生の『三国志』であります。わかっているのです。

 そのあたりの難しさは原作ものならではだな、と思い、vol.1でそのリズムをつかむことができてよかったと思っています。

 vol.1を作成する中でそのようなところが大変だったり面白かったりしたわけですが、作品を作っていく中で「女で三国志やらないとわからなかったかもな・・・」と、期せずしてわかったことがありました。
 それは一体何なのか。また次回に書きたいと思います。